【おじゃまタクシー】vol.16「とうきょうとっきょこきゃきゃ…」~早口なのか?

【おじゃまタクシー】vol.16「とうきょうとっきょこきゃきゃ…」~早口なのか?


【おじゃまタクシー】

ちょっとおじゃまします。

【桜にN】(日本交通グループ関西)の元ドライバー 「日交郎(ニコロー)」が、タクシーやハイヤーの乗務経験 をもとに、安全運転に関することや大阪の話題などを自由に 書き綴るブログです。

おヒマなときにでも目を通していただければ幸いです。

日本交通 行灯

皆さん、早口言葉はお得意ですか?
試しに、下にあげた例文をできるだけ速く、かつ5回連続で口に出して読んでみましょう。

      「東京特許許可局局長今日急遽許可却下」
      「炙りカルビ炙りカルビ炙りカルビ」
      「大なだらか坂 中なだらか坂 小(こ)なだらか坂」
      「となりの客はよく柿食う客だ」
      「骨粗鬆症訴訟勝訴」
      「新進シャンソン歌手総出演新春シャンソンショー」

     ん~、どうでしたか。…え?私ですか?そんなモン1回目で舌嚙んでますがな。

ところで、世間ではよく、「早口言葉」は「滑舌(かつぜつ)」の練習だといわれているようです。

でも広辞苑によりますと「滑舌」とは「はっきり発音するための舌や口の滑らかな動き」とあります。要するに「はっきり発音できること」が「滑舌」だということになりますよね。

おや、ここには「早く喋ることができる」という要素は入っていませんね。
そう! 実は「早口言葉」と「滑舌」は(直接的に)イコールではないのです。

で、何を言いたいのか?というと…

一般的に多くの人は、かなり「早口」でしゃべっていると私は思っています。
でもここでいう「早口」とは滑舌が良くてかつ速く喋っているのではなく、単に言葉(発音)を省いてしまっていて、その結果が「早口」のように聞こえる、ということなのではないのかな、と。

例えば…

     「にしㇺらさンめしくた?」「くた」「なンくたン?」「パン」「ンなンタらんやろ」
     「せやな、なンかく?」「せやな、なンでもェよ」

    わかります? これを漢字交じりで省かずに書くと…

     「西村さんメシ食うた?」「食うた」「何食うたん?」「パン」「そんなん足らんやろ」
     「せやな、何か食う?」「せやな、何でもええよ」

まぁ普通の会話ならそれでもかまわないのですが、私たちのような接客仕事に就いているものは、それでは困ります。なぜなら、お客様に対して挨拶し必要なことを正確にわかりやすくお伝えし、かつお客様のおっしゃることに対して正確な復唱と確認をしなければならないから、です。
ところが、丁寧でもなくわかりやすくもなく、おまけに正確な復唱もしないと…

 「はい!どちらまで?」 「ん~っと『た〇△』」 「あ、『た×◇』ね。あいよ」
          (十数分後)
 「お客さん、つきましたヨ」 「どこ?ここ」 「え?『田辺』っす」
「え?…え??」
 「1,400円になりますわ」 「ちょ、ちょ、ちょ待ってぇや」 「なんスか?」

「ワシ、『玉出』っていうたはずや」
「えぇ?『田辺』っていいましたやん」 「ちゃうわっ!玉出や!」
「なんや、玉出かぁ、早よいうてぇなぁ。ほな、クルマ降りてこの道を真っすぐ西に向いて歩いたら
小一時間で行ける」
「アホか!!なんでワシが小一時間も歩かんならんねん!」
「あかん?」 「あかんに決まっとるやろがっ!」 「ほな地下鉄で行く?」

「なんでやねん。ワシ、何が悲しうてタクシー降りて地下鉄に乗り換えやな
あかんねん…トホホ」

これでは「接客」とはいえませんよね。そもそもタクシーの役割を果たしていない。
…まぁ、ちょっと極端でしたけど。

本当なら、以下のようなやり取り(お客様とのコミュニケーション)でないとうまくいきません。

女性ドライバー

 「ご乗車ありがとうございます。
東京・日本交通のニコローでございます。
  どちらまでお送りいたしますか?」
 「ん~っと『た〇△』」
 「はい、『た・な・べ』ですね?」
 「あ、いやちがう、タマデに行ってくれる?」
 「はい、『玉出』ですね。かしこまりました。
ご指定のコースはございますか?」
 「このまままっすぐ南に向いて、あべの筋から南港通りを右でええわ」
「はい、あべの筋から南港通り、播磨町の信号を右ですね。
かしこまりました」

ことほどさように、きちんと目的地を復唱し、かつコースまで確認すれば、目的地を間違えようがないですよね。

私たち「桜にN」のタクシーは上に示したような接客言葉を「スタンダード10」としてまとめ、
お客様がご乗車になった時の車内対応の基本として定めています。
これは「マニュアル」というより「最低限のマナー」としてあるべきではないかな、
と思っています。

そのうえにお客様への言葉がけを「ゆっくり」「丁寧に」「正確に」行うことが大切、
つまり本来「滑舌」とはそういう意味だということです。
ゆえに「早口」である必要はどこにもなく、それどころか全く不必要だといえます。

結局は「相手に何を伝えたのか?」ではなく「相手に何が伝わったのか?」
を考えないと、いい接客サービスにはならないということですね。

これをウチのドライバーたちには研修などで伝えていますが、ではちゃんと「伝わったのか?」と問われると…うーん、うーん…、やはり難しいですね(爆
                               

(ニコロー)

#桜にN #安全運転 #ニコロー #早口言葉 #滑舌 #スタンダード10